塩と泥と眼鏡

浅く広いぬるいヲタクの備忘ログ

「声で人を好きになって、もう一年。まだ一年。」私のための817文字、語らぬ恋文

 初めて貴方の声に惚れたあの日のこと、今でも忘れない。

 あの作品を一気に一日で見て貴方の演技に引きずり込まれた。

 そこから貴方の足跡を辿るようにたくさんの作品に触れた。アニメだけじゃなく、吹き替えやラジオ、バラエティまで、今見ること聞くことのできるものを、自分の追える範囲ではあるが、いろいろ目にした。

 今まで縁なんて無かったゲームのファンミーティングイベントやアニメーション映画のライブビューイングにも行った。ラジオにもたくさんメールを送った。

 それから、貴方の演技を聞きたくてゲーム機すらも買った。普段アマゾン以外のネット通販なんてほぼ利用することなんかないのに、貴方の歌う曲が一曲でも多くほしくて、使った事の無い通販サイトを何度も使った。

 ここまで人の声に惚れ込んだのは初めてだったのだ。声で人を好きになったのは初めてだった。だからどう応援していいかもわからなくて沢山戸惑った。でも、いままでと同じでいいんだなって思ってからは早かった。

 もうその日から一年が経って、気付いたら私の生活は貴方の色で埋め尽くされている。いままでアイドル一辺倒だった私が声優を応援する日が来るなんて夢にも思っていなかった。

 その声に、何度も励まされた。近所のお兄さんのように優しくて、でもどこか子供のように楽しそうな声のラジオは毎週の楽しみになった。どこまでも伸びやかに響く歌声は毎日の支えになった。

 演技のために命を削る姿を見て、私も頑張らなければならないと何百回も勇気づけられた。ステージの上でホワイトアウトしたいと語る爛々とした声に震えた。この人はきっと舞台に立つためだけに生まれてきたのかもしれない。生き急ぎで死に急ぎのその役者を私は飽きるまでこの目に焼き付けるだろう。飽きる瞬間はいつかわからない。でも、貴方がスポットライトの下で朗々と他者になる姿を見るまで、きっとその瞬間は訪れない。

 多分私は、まだしばらく貴方のことを好きでいるだろう。